裁判所事務官一般職大卒の学習計画(半年~1年/専願)

今回は、裁判所事務官一般職大卒を専願で目指す独学の学習計画を取り上げます。ここでは、大学3~4年・既卒者・社会人を対象にしています。本試験まで半年~1年の学習期間を想定していますが、1年半を切った時期ならいつ始めても構いません。全くの初学者を想定した独学の学習計画です。

裁事一般職大卒は、専門試験は憲法7問、民法13問が必須科目で、刑法又は経済理論が選択科目(10問)です。また、記述式の専門試験(専門記述試験)で憲法が課されます。

また、基礎能力試験(教養試験)は40問中、判断推理11問、数的推理5問、文章理解10問(現代文と英文が5問づつ)と非常に大きなウェイトを占めています。資料解釈は1問です。知識分野(一般知識)は、社会科学5問、人文科学4問、自然科学4問です。

まずは出題数が高く、単純な暗記だけでは通用しない数的処理(判断推理、数的推理)、憲法、民法、経済学(経済理論)、社会科学に先行して取り組むべきです。

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数的処理(判断推理、数的推理)

数的処理(判断推理、数的推理)は、「新スーパー過去問ゼミ4 判断推理」「新スーパー過去問ゼミ4 数的推理」をおすすめします。要点整理と過去問演習が一体となった過去問集であり、これ1冊で初学者でも基本から本試験まで備えることができるメイン用途の教材です。

裁事の基礎能力試験(教養試験)は、地上・国一レベルの標準的な問題がほとんどです。1~2割程度は国総レベルの難問が含まれます。過去問集は、1回目は要点整理をよく読んで、必修問題だけ取り組んで、一通りの解法パターンを習得します。2回目以降は、必修問題に過去問演習を加えます。

国総の問題や難問は一度は取り組んでみて、解説を読んでも分からない問題は無理に固執せず、飛ばしても構いません。基本~標準問題を固めつつ、難問は解説を読んで理解できる問題は繰り返して、自力で出来る問題に加えていきましょう。

社会科学

社会科学は、政治・法律が3問、経済と社会が1問づつ出ています。法律科目の学習経験が無い方は、試験勉強の初めのうちに取り組んでおくと、専門科目が理解しやすくなります。

社会科学の過去問集には、「公務員試験過去問新クイックマスター 社会科学」をおすすめします。過去問集としては解説部分が詳しめで、標準問題に力を入れています。高校の教科書~センター試験レベルの問題が多い一般知識では、適切な選択だと思います。

専門試験(択一対策)

裁事の専門試験(択一式)も、大半は地上・国一レベルの問題演習で対応できる標準問題です。国総レベルの難問は、基礎能力試験よりやや多く、2割前後含まれます。やはり手堅く基本~標準問題をおさえつつ、難問も出来る範囲で取り組むべきです。

専門試験(択一式)のうち、憲法、民法、経済学(経済理論)は、ある程度体系的な理解が必要で、後回しにするとやっかいな科目です。最重要科目と位置づけ、先行して取り組むべきです。

その一方、刑法は、経済学に比べると暗記的な要素が強く、あとから学習しても良い科目だといえます。専願であれば選択科目は1つに絞らず、両方とも学習しておくことをおすすめします。

専門科目の過去問集には、憲法、民法、経済学、刑法とも、網羅性が高く、収録問題に無駄が無い「新スーパー過去問ゼミ4」をおすすめします。

スー過去は、要点整理をよく読んで、必修問題から過去問演習という流れが出来れば、初学者でも全くの基礎から本試験レベルまで対応できる完結型教材です。ただ、初めて学ぶ科目、スー過去だけでは分からないという科目、記述式で課される憲法では、入門書の併用をおすすめします。

入門書は、憲法、民法では、「まるごと講義生中継」をおすすめします。大手予備校TACの講義を書き起こした参考書で、リアルな生授業の臨場感そのままに、初歩から何度でも読みやすく、非常に分かりやすい良書です。

経済学の入門書としては、「最初でつまずかない経済学」(マクロ編/ミクロ編の2分冊)、「らくらく経済学入門 週刊住宅新聞社」(マクロ、ミクロ、計算問題編、記述・論文編の4分冊)、「速習!経済学 石川秀樹」(速習!マクロ経済学、速習!ミクロ経済学、基礎力トレーニング(マクロ&ミクロ)の3分冊)の各シリーズから1つ選んで読み込んでおくことをおすすめします。

どのシリーズを使う場合も、公務員試験にはマクロ、ミクロの2冊で十分です。どれも経済学を初めて学ぶ方を想定した、非常にわかりやすく定評のある参考書ですし、見た目や値段で選んでも構いません。

刑法の入門書は、「伊藤真の刑法入門 日本評論社」をおすすめします。とてもバランスが取れたスマートで偏りの無い記述で、刑法を初めて学ぶ方にも、初歩の段階から分かりやすく解説した参考書です。

専門試験の択一対策は、スー過去をメイン教材と位置づける一方、入門書を何度も通読して読み込んだり、スー過去で分からなかった箇所を参照して併用します。過去問演習で必要な解法や知識を駆使する方法を身につけながら、入門書で基礎知識のインプットを行います。

憲法の記述対策

裁事一般職の憲法の記述式試験は、一行問題や説明問題といった基本問題が頻出です。高度な論証や難解な知識を要する国総レベルの難問が出ることはありません。

このため、憲法の記述対策は、特別な専門書は不要です。択一対策および入門書をクリアした段階ならいつ取り組んでも構いません。項目別に典型的な重要論点を一通り整理しましょう。

裁事一般職の憲法には、「公務員試験 専門記述式 憲法 答案完成ゼミ 実務教育出版」をおすすめします。考えられる定型的な重要論点を整理できる標準的な良書です。

時事対策

裁事では時事問題が独立した科目として出ることはありません。ただし、一般知識や論文試験では時事的な動向を反映した出題が見られるため、時事対策はしっかりと行うことをおすすめします。

公務員試験の時事対策の参考書といえば、受験生に幅広く使われている定番中の定番「公務員試験 速攻の時事 実務教育出版」がおすすめです。政治、経済、財政、国際、厚生、労働、文部科学、環境、司法警察、社会問題を単に網羅するだけでなく、公務員試験でよく出る頻出項目を的確に解説した良書として知られています。

本書には併用教材として「公務員試験 速攻の時事 実戦トレーニング編」もあります。掲載問題の難易度にバラつきがあるため、問題を解いた出来不出来を気にする必要はありません。問題集としては、出題可能性がある項目を知る参考程度で良いでしょう。

その一方、トレーニング編は、重要な時事用語・約400語をとてもスマートに解説しており、強力な時事用語のチェック集として併用がおすすめできます。

これとは別に、「直前対策ブック 実務教育出版」もおすすめです。公務員試験ではよく出るのに、受験生が学習漏れしやすい白書、法改正&新法、重要判例、各種統計やデータに強く、直前期の時事対策の補強に役立ちます。

このほか、時事問題や社会事情では、ノーベル賞の受賞者や五輪のメダル数などを問う問題も出ます。そこで、原則として年に3回(春・夏・秋号)刊行される「最新時事用語&問題 新聞ダイジェスト別冊」を使って、定期的な時事対策の補強を行うことがおすすめです。

文章理解

文章理解も裁事では重要科目です。古文は出ることは無いため、学習する必要はありません。まず、試験勉強の初めのうちに、「新スーパー過去問ゼミ4 文章理解・資料解釈」で、現代文と英文の必修問題を何問ずつ解いてみます。

ここで、英文の速読や語彙力に不安を感じたら、「速読速聴・英単語 Core 1900」をおすすめします。大学受験で使った経験があるなら、「速読英単語(2)上級編」に替えても構いません。

どちらの参考書も、比較的長めの英文を掲載した単語集であり、英文を速く読む力と、英単語の習得を両立させた良書です。学習期間を通じて、速読と語彙力アップの練習を行います。

文章理解のメイン教材としては、「新スーパー過去問ゼミ4 文章理解・資料解釈」に着手します。文章理解自体は暗記的な要素がほとんど無く、問題を解く勘に慣れることで点が取れる科目です。いきなり過去問集から始めても構いません。

文章理解は1日あたりの学習時間は短くても構いません。あまり早い時期から学習する必要もありません。スー過去は現代文と英文を1日1~2問ずつ解き続け、問題を解く勘を失わないように勉強しない日を作らず、本試験まで毎日コツコツ解きましょう。

文章理解は、最重要科目の理解のめどがついてから過去問集に着手して良い科目です。スー過去を解き切ったら、「公務員試験過去問新クイックマスター 文章理解」または「過去問500」に入っても構いません。

資料解釈

資料解釈は裁事一般職では1問です。裁事の専願なら、学習しないという受験生も多いと思います。ただ、学習効果が高く、文章理解と同じ時期に同じ要領で、毎日コツコツ1~2問、本試験まで問題を解く勘を失わないように過去問集を解けば十分です。

資料解釈も過去問集は「新スーパー過去問ゼミ4 文章理解・資料解釈」がおすすめです。無理に学習する必要の無い科目ですが、時間的な余裕があれば、必修問題だけでも解いておくと、問題を解く勘がついてくると思います。

人文科学、自然科学

人文科学は日本史、世界史、地理、思想が1問づつ、自然科学は化学、地学、物理が1問づつ出ます。出題数が非常に少なく、後回しにして構わない分野です。最小限の学習で、基本問題に絞った過去問集を使います。

人文科学、自然科学は「上・中級公務員試験 20日間で学ぶ 日本史・世界史(文学・芸術)の基礎」「上・中級公務員試験 20日間で学ぶ 社会・地理(思想)の基礎」「上・中級公務員試験 20日間で学ぶ 生物・地学の基礎」「上・中級公務員試験 20日間で学ぶ 物理・化学(数学)の基礎」をおすすめします。

「20日間で学ぶ」は、要点整理と過去問演習が一体となった速習型の過去問集です。要点整理を熟読の上で、演習を繰り返します。出題数を考えれば、時間的な余裕が無い方は、最重要テーマや無印の基本問題に絞りこんでも構いません。

論文試験(小論文)

裁事一般職大卒で課される論文試験は、以下の出題例があります。

  • 現代社会における価値観やライフスタイルの多様化が組織に与える影響を検討し、組織として取り組むべき課題や対応策について論じなさい。
  • いわゆる「ゆとり世代」の若者が社会で活躍していく上で、強みとなることと課題となることについて、あなたの考えを述べなさい。
  • いきいきとやりがいを持って働くことができる良好な職場環境を整える上で、あなたが重要と考える要素を検討し,その実現に向けた方策について論じなさい。

裁事一般職の論文試験は、生活や社会の変化と、それに対する個人や組織の対応を問う課題が頻出です。人間と現代社会、人間と社会生活のあり方ともいえますし、課題自体は高度な難題ではなく、標準的な難易度といえます。

公務員試験の論文の参考書といえば、「論文試験 頻出テーマのまとめ方」がおすすめです。幅広いテーマを網羅した参考書ですが、情報量が膨大で、要求される記述のレベルや解説が高レベルであり、挫折率が高い参考書でもあります。

しかし、国家・地方公務員とも豊富に過去問を掲載し、幅広いテーマや全国自治体の直近の出題例を数多く網羅しており、本書に代わる参考書は無いと思います。答案例は参考例にとどめ、早いうちから読み始めておけば、必ず役に立つ良書です。

また、本書は主に、国家一般職や地方上級・市役所試験を対象にした参考書です。災害対策、資源とごみ問題、住民サービスなど、裁判所と直接関係が無く、地方色の強い課題の章はどんどん飛ばしていけば、非常に有益な論点対策の参考書として使えます。

「頻出テーマのまとめ方」は、情報化、高齢化、青少年と教育問題、男女共同参画社会など、地域に依存しない社会的なテーマの章を読んでいけば、裁事の論文試験の効果的なテーマ対策となります。

ただし本書は、基本的な論文のルールや、一般的な論文作成のノウハウに関する記述がありません。そこで、「1週間で書ける!! 公務員合格作文」をおすすめします。

「1週間」は、第1編で論文の分量や接続詞の使い方といった、形式的な面から「減点されない」答案づくりのノウハウを解説し、第2篇では問題の背景から問題点を浮かび上がらせ、その背景から自己主張に導く内容面からの論文を書く方法を説明しています。

「1週間」は、あらゆる課題に対応して、合格答案に結びつく論文の書き方が理解できる優れた参考書です。第3編は論点集ですが、市役所以外では内容不足ですし、テーマ対策に「頻出テーマのまとめ方」を使うなら飛ばしても構いません。

裁事一般職の論文対策は、「頻出テーマのまとめ方」で個別のテーマ別対策を行う一方、「1週間」でしっかりと合格ラインに達する答案作成術を習得します。これを試験勉強の初めにこなしておけば、あとになって答案練習や添削指導を自信を持って取り組めます。

答案練習自体は、早期から行わなくても構いません。裁判所の公式サイトで直近年度の論文課題は公開されています。直前期に参照し、実際に答案を書いてみて、大手予備校の利用、大学のキャリアセンター、あるいは、知り合いの先生に頼んでも良いので、添削指導を受ける機会は必ず確保しましょう。

面接対策

裁事一般職大卒の人物試験は2次試験で課されます。個別面接です。こちらも早い段階で参考書を読んでおくと、あとの面接対策が優位に進められます。

面接・官庁訪問の秘伝」は自己分析を通じて自分のコアな部分を作り、あらゆる質問に対応できる手法を解説しています。

公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」は、採用する側つまり面接官の事情を取り上げ、面接官がどういう意図で試験に望んでいるのか、採用側が何を求めて質問するのかといったアプローチを解説しています。

両者は非常に対照的な参考書で、2冊合わせて読めば、受験者と面接官の両面から面接試験の実像を知り、自分自身の対策に活かすことができます。

なお、裁事一般職には官庁訪問が無く、面接試験は個別面接です。このため、「秘伝」は1、3章、「現職人事」は1、3~5章だけ読めば十分です。これらを早期に読み込んでおけば、あとになって模擬面接で戸惑うことも無いはずです。

参考書は早いうちに熟読します。その後、大手予備校の利用に限らず、ハローワークや大学の学内講座・キャリアセンターなどで実施する模擬面接を活用し、面接試験に備えましょう。

模試/本試験問題集

裁事一般職の場合も、模試はLECの「地上・国家一般職<行政系>スペシャル模試パック」やTACの「公務員 公開模試」がおすすめできます。

もちろんパックではなく、各回ごとの受験も可能です。模試は早い回では受験前年の11~12月に行われ、これは学習科目の到達度を測るのに最適です。年明け以降、主に2~5月に実施される模試は、総合的な実力を確認し、弱点分野の発見と補強に活かしましょう。

また、市販の問題集では、裁事一般職の直近の試験問題を復元し、年度別に収録した「本試験過去問題集 裁判所職員一般職 大卒程度 TAC」をおすすめします。年度別に取り外しが可能で、解説が詳しく、模試のように自宅で時間を測って予行演習を行うことが可能です。

裁事一般職は、地方上級や他の国家公務員のように、裁事に特化した総合的な演習書がありません。このため、科目別学習のめどがついたら、模試や本試験問題集になるべく多く取り組み、演習量の上積みをはかることをおすすめします。

裁判所事務官一般職大卒の学習計画(半年~1年/専願):まとめ

裁事一般職の場合、単純な暗記が通用せず、出題ウェイトが高い数的処理、憲法、民法、経済学に真っ先に取り組むべきです。これらの科目に比べ、刑法は学習の負担が大きくないため、あとから取り組んでも構いません。

裁事の専門試験の選択科目は、2科目とも取り組むことをおすすめします。問題を見てどちらかの科目を選択することが出来るため、選択の余地を残しておくべきです。

文章理解は出題数が多い重要科目ですが、暗記的要素が少なく、早期から取り組む必要はありません。本試験までコツコツと解いたほうがよい科目です。

論文や面接は、早いうちから参考書を読み込んでおきます。その後、添削指導や模擬面接の機会を確保しましょう。

資料解釈、人文科学、自然科学は、出題数を考えれば、最も後回しにしてよい分野です。必修問題や重要な問題に絞った最小限の学習で十分ですし、時間的な余裕が無い方は、学習科目を絞ることを検討しても良いでしょう。

直前期は模試や本試験問題集を活用しつつ、なるべく多くの科目に毎日取り組み、総合的な得点力の引き上げを行って試験本番に備えます。