面接試験、官庁訪問の参考書(大卒程度公務員)

今回は、面接試験(個別面接、集団面接、集団討論)や官庁訪問に対する、大卒程度公務員試験の人物試験(口述試験)の参考書を、一括して取り上げます。ここでは、面接カード(訪問カード、エントリーシート、面接調書など)対策も含みます。

今回の記事は、国総(国家総合職)、国般(国家一般職大卒)、地方上級(都道府県、政令指定都市、東京都特別区)、市役所大卒、裁判所一般職大卒、国税、理系公務員、福祉系・心理系公務員など、大卒公務員の殆どの方が使える参考書を紹介します。

(以下のリンクは、それぞれの名称によるアマゾン(Amazon.co.jp)の検索結果ページを含みます)

なお、公務員試験の場合、毎年最新版が出る参考書は、なるべく自分の受験年度に近い、新年度版の購入をおすすめします。

公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本

公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」は、毎年11月下旬~12月半ばの間に新年度版が発売されます。国総や国般を対象にした本ですが、国家専門職・特別職、地上、市役所大卒でも、大いに参考になると思います。

本書は、自己紹介ではない自己PR、志望動機、提出書類を、面接官にみんな同じと思わせない、自分だけのアピール法を伝授してくれます。想定問答集ではありませんが、根本的な「自分の軸」によって、あらゆる面接の質問に対応することができます。

公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」では、自己PRの章で、自己PRのためにすべき自己分析や、それをやりたい仕事と結びつけて自己PRに転換すること、それを表現するアピール表現の磨き方、コンピテンシー面接にも対応できるエピソードの掘り下げ方を解説しています。

また、情報収集や志望先の官公庁ノートの作り方、面接官が求めるものに触れつつ、そもそも自分はどんな人間かと、「就職」の根本から考えて、なぜ公務員か、なぜその官庁(志望先)か、公務員として本当にやりたい仕事は何かと、志望動機の徹底的な考え方を説明しています。

さらに「公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」では、受験申込書や面接カードも、採用側はよく見ており、構成をしっかり練ることや、文章の書き方、アピールポイントの作成や、その場で記入を要求される場合も取り上げて、スキのない準備や取り組み方を解説しています。

本書の中には、あなたにとっての就職とは何か、公務員になりたいのはなぜか、なぜその志望先を選んだのかについて、いくつかの設問に自由記述できるチェックシートも掲載され、志望動機の土台となる自己分析に取り組むことも出来ます。

面接官との実際のやり取りで、失敗例も掲載されていますが、これをありえないなと思った方は、さすがに安心して良いと思います。本書は、採用側や面接官が、提出書類や自己PR・志望動機に関して、どこで何を見ているかも説明しています。

総じて言えば、「公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」は、自己分析で確立した「自分の軸」を、志望動機や提出書類に繋げる方法を通じて、あらゆる質問に対応できる、優れた良書としておすすめです。

現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本

一方、著者も出版社(実務教育出版)も同じ「現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」は、毎年4月初旬に最新版が発売されています。こちらは、面接試験・官庁訪問や面接官の本音、想定問答集を掲載し、より実践的な参考書といえます。

こちらの本は、主に国総と国般の面接試験、官庁訪問、集団討論、採用試験の最終合格から内定→採用までをカバーしています。国家専門職や特別職の方にも参考になると思いますが、地方公務員の方には向いていません。

現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」は、冒頭の章で、公務員や公務員試験、面接試験・官庁訪問に関して、こんな考えはダメだという、相当に基本的な所から説明しています。それでも、著者が1つ1つ指摘している「勘違い」について、1つでも該当する方は要注意です。

その後、面接カード、個別面接、ウェブ面接(オンライン面接)、集団討論、プレゼンテーション、国総と国般それぞれの官庁訪問に関して、受験者なら押さえるべき事柄を、「極意」という言葉を使いながら、簡潔かつ平易に解説しています。

なんと言っても本書は、面接官側の立場に触れた章で、採用側は「こいつと仕事したいか」という視点で見ていることや、公務員試験の面接や官庁訪問でも、コンピテンシー面接が進化しており、採点も組織的にマニュアル化している点を突いています。

現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」は、面接試験・官庁訪問の基本や、採用側(面接官)が何をどう見て評価しているかを踏まえた上で、約30項目に及ぶ想定問答集を掲載し、「何を求められているから」「どう答えるべきか」を提示する優れた参考書に仕上がっています。

さらに、面接試験や官庁訪問で、出発前から面接室に入るまでの準備・心構え、控室の過ごし方、実際の面接で様々な場面に遭遇した時の対処法や心の持ち方、集団討論や集団面接についてと、本番そのものに対する備えを列挙して説明しています。

最後の章では、採用試験の合格から採用に至るまでの過程で、複数の内定を得た時、第一志望では無い官庁・機関から内定を得た時、採用先が決まらない時のそれぞれを取り上げた上で、採用後はどうあるべきかまで説明しています。

現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」は、国家公務員を前提に、採用側や面接官がどこで何を見ており、受験者はどこをどのように注意すべきかを説いた良書であり、実践的な想定問答集としても、十分おすすめです。

公務員試験 面接の秘伝

TACの「公務員試験 面接の秘伝」(2022年度版までは「面接・官庁訪問の秘伝」)は、国総こそ対象外ですが、国般、国税、裁判所一般職大卒、地方上級、市役所(大卒)の個別面接、集団面接、集団討論、官庁訪問に対応する、非常に優れた参考書です。

本書は毎年1月末~2月末に最新版が出ており、TACの人気講師・山下純一氏が手掛けています。自分だけの軸となる「コア」を作り、志望動機を明確にすることで、あらゆる面接に回答できるベース作りまで伝授してくれます。

また、国家公務員や地方公務員の2次面接を再現したシミュレーション、官庁訪問の内容および体験記、約25の想定問答集が掲載され、面接試験はもちろん、官庁訪問の実態について、身近な方に聞く機会が無い方には、大いに参考になるはずです。

公務員試験 面接の秘伝」は、面接試験や官庁訪問の基本や心構え、面接カードの書き方、身だしなみなどのマナー、試験前日・当日・会場入り前から本番での礼儀から、自分のコアを作ることや、豊富な想定問答集までカバーしており、1冊で一貫した面接・官庁訪問対策ができる、完結型の優れた良書といえます。

大卒程度公務員 面接対策ハンドブック

実務教育出版の「大卒程度公務員 面接対策ハンドブック」も、毎年4月初めに最新版が出ています。本書は、国総、国般、地方公務員(大卒)の面接試験や官庁訪問に対応する、想定問答集をメインにしたオーソドックスな参考書です。

この参考書は、公務員面接の基本や、個別面接、集団面接、集団討論の流れ、服装やマナー、敬語などの基本事項を、サラッと簡潔におさらいしており、約70項目も取り上げた想定問答集がメインとなっています。

大卒程度公務員 面接対策ハンドブック」も、面接試験や官庁訪問の前に知るべき基本事項をまとめた上で、他書よりもはるかに多い数の想定問答集を掲載しています。その分、1つ1つの記述はコンパクトですが、他書と併用して想定問答を検討する際の、サブ参考書としておすすめします。

公務員試験 現職採点官が教える! 合格面接術

公務員試験 現職採点官が教える! 合格面接術」は、市役所の面接試験(個別面接)に特化した参考書です。地方上級、市役所、町村役場などで、個別面接以外は受けることが無い方におすすめです。国家公務員には向いていません。

この参考書は、地方上級や都市部の自治体が広く導入している、コンピテンシー面接や圧迫面接など、近年の人物重視の傾向に踏まえているとは言い切れず、想定問答に関する記述も、やや紋切り型かと思われるきらいがあります。

その一方、面接カード(シート)の書き方や身だしなみ、面接試験に臨むべき心構えや準備、入室から退室までの流れなどの基本事項は要点を押さえつつ、約30の想定問答を掲載し、これ1冊で地方公務員の個別面接に対応できる、古典的な良書です。

また、二色刷りでイラストを交えながら、面接試験の要所は押さえており、オーソドックスな参考書としておすすめできます。先輩やOBの方々を通じて、厳しい面接は無いと分かっている自治体であれば、「公務員試験 現職採点官が教える! 合格面接術」1冊でも通用すると思います。

面接試験・官庁訪問の参考書:結局どれが良いの?

公務員試験の面接試験や官庁訪問の参考書で、結局どれが良いのか?といえば、こうした面接対策を行う時期と、取り組むべき内容に関わってくると思います。

面接試験や官庁訪問の対策は、時間をかけて行うべきですし、実際に真剣にやると、結構な時間を使います。取り組み始めるのは、1次試験が終わった後でも、早くは無いと思いますし、早いなら早いほど良いと思います。

もちろん、現実には、面接試験や官庁訪問までに、時間的な余裕が無い方もおられると思います。ここでは、そうした場合も想定していきます。

その一方、面接試験や官庁訪問に対しては、自己分析を通じた「自分の軸」を作ること、面接/訪問シート(カード)・エントリーシート対策、実際の想定問答づくりが、面接対策の大きな柱だといえます。

自己分析や面接/訪問カード(シート)対策は

今回の参考書の中で、まずどれが良いか?と言われれば、国総や国般の方には「公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」、裁判所一般職大卒、国税、地方上級、市役所の方には「公務員試験 面接の秘伝」をおすすめします。

どちらも、まずは徹底した自己分析を通じて、どんな質問にも乗り切ることができる「自分の軸(コア)」の作り方や、面接試験・官庁訪問における基本的なマナー、心構え、臨むべき姿勢あるいは避けるべき姿勢を習得できる良書です。

想定問答に取り組むだけでは、どこかで辻褄が合わなくなったり、必ずボロを出します。現在の公務員面接では、コンピテンシー面接や圧迫面接が広まっており、採用側や面接官は、受験者のスキであるとか、矛盾したところを必ず突いてきます。

それに対して、自分はどういう人間で、どういう性格(長所、短所)や学習経験や体験を持ち、それがどう志望動機や適性と繋がるのかという「自己分析」を行うことで、あらゆる質問に対応できる「自分の軸」を持つことができます。

また、「自分の軸」を持つことは、面接対策そのものに加えて、面接シート(カード)、想定問答、(国家公務員なら)官庁訪問の対策を一体的・総合的に行うことができますし、整合性の取れた(矛盾することが無い)、一貫してブレない回答やアピールを行うことができます。

なお、国般・大卒の方のうち、「公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」が合わなかった方や、官庁訪問を身近な方から知る機会が無い方は、「公務員試験 面接の秘伝」に代えるか、あるいは2冊の併用でも良いと思います。

想定問答の検討・作成は

一方、想定問答集の検討や作成に関しては、国総や国般の方には「現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」、裁判所一般職大卒、国税、地方上級、市役所の方には「公務員試験 面接の秘伝」がおすすめです。

今回の参考書でも触れられていますが、想定問答は参考書をまんまパクるのではなく、自己分析と志望動機に基づいて、自分の根本的な軸を確立にした上で、そこからブレることが無い、一貫性のある回答を検討すべきです。

もちろん、面接試験や官庁訪問は、評価する側もされる側も人間です。参考書に関しても、著者の個性が反映されがちです。特に想定問答では、1つのシリーズや1冊の参考書にこだわらず、複数の参考書で、多面的な見方を練習して良いと思います。

想定問答を作る上では、「現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」「公務員試験 面接の秘伝」および「大卒程度公務員 面接対策ハンドブック」を用意しておいて、同じ方向を向いている(=どの著者も妥当だと考えている)回答や解説を抽出し、これをベースに自分なりのアレンジを加えることで、独自性を打ち出すこともおすすめです。

これとは逆に、模範回答だけでなく、ダメな回答例を記載している場合も、複数の参考書で同様の指摘があれば、こういうことは絶対やっちゃダメだと、書き出しておいても良いと思います。

なお、「大卒程度公務員 面接対策ハンドブック」は、メインの参考書としてはおすすめしませんが、相当に豊富な数を掲載した想定問答を活用する目的で、他の参考書と併用してサブ的に使うのには、十分おすすめできます。

時間的な余裕が無い場合は

面接試験や官庁訪問まで時間的な余裕が無い場合、それでも国総や国般の方には、「公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」と「現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本」の2冊はやっておいてほしいところです。

その一方、国般の方をはじめ、裁判所一般職大卒、国税、地方上級、市役所の方であれば、1冊で済ませたいという場合は、「公務員試験 面接の秘伝」だけで、スマートに面接・官庁訪問の対策を行うことができます。

ただし、「公務員試験 面接の秘伝」は、要所をコンパクトに1冊でまとめている分だけ、記述が簡潔ですので、これをメインにしつつ、よく分からない点やもっと知りたい点が出てきたら、それが自己分析や面接カード対策であれば「公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本」、想定問答なら「大卒程度公務員 面接対策ハンドブック」をサブ参考書として、補助的に併用しても良いでしょう。

なお、政令市や中核市、県庁所在地など都市部を除く、地方の市役所・町村役場のうち、コンピテンシー面接や圧迫面接など厳しい選考が無いと判明している自治体なら、「公務員試験 現職採点官が教える! 合格面接術」1冊で、ワンパターンで定型的ですが、限られた時間の中で、最低限の対策はできると思います。

どの公務員試験で、どの参考書を使う場合も、マナー・みだしなみ・敬語などの基本知識、入室から退室までの流れ、(官庁訪問なら)採用試験から採用までのプロセス、面接/訪問カード(エントリーシート)の書き方、想定問答の検討と作成など、メインの参考書1冊を軸にしつつ、それでは物足りない(理解が不十分な)所が出てきたら、該当する項目を部分的に補充するために、躊躇なく他の参考書をサブ的に追加して良いと思います。