労働基準監督官A(法文系)の参考書

今回は、労働基準監督官A(法文系)の参考書を取り上げます。

労働基準監督官は、基礎能力試験(教養試験)の択一式試験、専門試験の択一式および記述式試験、人物試験(面接試験)、身体検査が課されます。

このうち基礎能力試験は、同日実施の国家専門職(国税、財務など)や防専と共通問題が課されます。専門試験は労基A(法文系)と労基B(理工系)でも出題科目が大きく異なっており、ここでは労基Aを対象に取り上げます。

基礎能力試験や専門試験の難易度は地方上級や国家専門職と同等ですが、労基特有の難しさを感じる科目もあるかと思います。参考書に関しても、こうした標準的な大卒程度の公務員試験をベースにしつつ、労基独特の対策を考慮した教材を取り上げます。

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必須の択一対策教材

労基に限らず、公務員試験(択一式)は基礎能力試験(教養試験)・専門試験合わせて数多くの科目を短期間でクリアする必要があります。このため、科目別・分野別に必要事項をインプットしながら過去問演習で解く力を身につけられる「過去問集」というタイプの一体型教材が各社から出ており、真っ先にこれに着手することが一般的な定石といえます。

スー過去

実務教育出版の「新スーパー過去問ゼミ5」は労基はもちろん、標準的な大卒程度の公務員試験なら、どんな初学者にもおすすめできる定番中の定番教材です。全くの初歩から本試験まで使用できる科目別・分野別のメイン教材といえます。

「スー過去」と言われる本書は、知識や解法に関するインプット部分と、難易度別・頻出度別に整理された過去問演習がテーマ別に収録された「過去問集」です。知識ゼロの初学者でも、インプット部分で理解しながら、過去問演習をこなすことで、本試験レベルの実力を順序よく身につけることができます。

過去問集は各社とも良書が出ていますが、労基など大卒程度公務員試験のスタンダードな定番教材として、まずはこの「スー過去」がおすすめです。教養・専門合わせて科目別に20冊以上出ており、労基だけでなく、地上・市役所大卒・国家一般職大卒など、非常に幅広い公務員試験に対応できます。

公務員試験は基礎能力試験(教養試験)・専門試験合わせて十数科目も課されることになり、インプットとアウトプットが一体となった「過去問集」と呼ばれる科目別のオールラウンド型教材で、どの科目も効率良くこなすことが定石といえます。

もちろん、過去問集は絶対に同じシリーズで揃える必要はありません。科目によってはスー過去が合わなかった場合、後述する他社のものに切り替えて構いません。ただ、「どれから着手すべきか迷う」という場合、まずおすすめできるのが「新スーパー過去問ゼミ5」といえます。

クイマス

LEC東京リーガルマインドの「公務員試験過去問新クイックマスター」も、先ほどの「スー過去」と同様に使える優れた一体型教材(過去問集)としておすすめです。

こちらも科目別・分野別に出版され、必要な知識や解法を習得しながら本試験の過去問演習をこなすことで、知識ゼロでも初歩から合格に必要な実力を身につけることができるメイン教材です。

本書は「クイマス」の略称で知られており、やはり地方上級、市役所大卒や国家一般職大卒を中心に、労基はもちろん、大卒程度の公務員試験に幅広く対応します。インプットとアウトプットを連動させて初学者が本試験まで使えるように編集された過去問集です。

この「クイマス」と先述の「新スーパー過去問ゼミ5」を比べると、問題演習として幅広くカバーした度合いや、収録過去問の厳選さはスー過去のほうが優っていると思います。

その一方、「クイマス」のほうがポイント整理(インプット)部分が優しく、図表やイラストが多めで読みやすい工夫がされています。このため、スー過去が合わなかった科目があった場合には、代替のメイン教材として、「公務員試験過去問新クイックマスター」が十分おすすめできる良書だといえます。

カコモン

TACの「だからカコモンで克服」も、初学者向けにインプット部分と過去問演習の一体型教材(過去問集)と言われるメイン用途の教材です。

本書は「カコモン」と呼ばれ、ポイント整理部分が非常に易しく、ビジュアル的な工夫もされていてとてもとっつきやすい過去問集といえます。ただし、過去問部分は基礎~標準問題を重視しており、労基Aや地上・国一にはやや不足かと思います。

ただし、公務員試験は、出題数が極めて少ない科目ほど基本問題しか出ない傾向があります。労基Aでこれを使うなら、1科目あたり1問しか出ず、多くの受験生が捨て科目にしてしまいがちな自然科学で投入することがおすすめです。

労基Aの受験生でも自然科学に割く時間に余裕のある方であれば、「新スーパー過去問ゼミ5」や「公務員試験過去問新クイックマスター」でも良いかもしれません。その一方、出題科目全体のバランスを考えれば、自然科学は「だからカコモンで克服 自然科学」に替えることも十分おすすめできます。

参考書

労基Aはもちろん、一般に公務員試験では、メイン教材である過去問集を各科目こなすだけで、基礎固め~択一対策は十分身につきます。ただし、ポイント部分が理解できなかったり、解説を読んでも解けない過去問が何度も出てくる科目の場合には、参考書で補充することを検討すべきです。

参考書は必須とは言いません。まずは過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5」や「公務員試験過去問新クイックマスター」など)だけ進めることで、労基でも基礎~択一対策は十分可能です。ただし、科目によっては参考書を併用して、問題を解くために必要な理解の補充という選択肢もキープしておきましょう。

まるごと講義生中継

スー過去やクイマスという過去問集から、科目ごとにどちらか一方をこなすだけで、択一式試験には十分対応できます。どちらも初学者から本試験まで使える良書ですが、これだけでは分からないという場合、テキストを補助的に使うことがおすすめできます。

こうした入門書としては、TACの「まるごと講義生中継」をおすすめします。大手受験予備校TACの人気講師の授業を再現したような講義調の文体で、非常に読みやすい参考書です。

本書は二色刷りでイラストや図表を多用して見やすさにも工夫がされており、一気に通読して各科目のアウトラインを頭に入れたり、過去問集でわからなかった箇所をひもといて知識や解法の補充を行うのにも便利なテキストです。

「まるごと講義生中継」は、知識ゼロの初学者でも基本から噛み砕いて理解できる非常に優れた入門書です。もちろんこれはテキストであって、本書だけで本試験問題が解けるわけではなく、やはりメイン教材=過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5」や「公務員試験過去問新クイックマスター」など)で徹底した重要事項の確認と過去問演習が必須と言えます。

このため、「まるごと講義生中継」は絶対必要な教材では無いものの、まずは過去問集をやってみて、わからないという科目が出てきた場合は追加して、その該当箇所を調べて読み込むといった知識や解法の補充的な使い方がおすすめです。

この参考書を労基Aで使うとすれば、「新スーパー過去問ゼミ5」だけで対応できる刑法、社会学では不要かと思いますが、憲法、民法、行政法あたりが理解できないという方にはおすすめできます。一般知能(知能分野)については、後述通り別途参考書を取り上げます。

まるごと講義生中継」は、過去問集だけでは分からないという科目が出た場合に、過去問集と併用しつつ、知識・解法の補充のための補助的なインプット教材としておすすめです。

経済学の参考書

労基Aの経済学(マクロ経済学、ミクロ経済学)も、過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5」や「公務員試験過去問新クイックマスター」など)だけで解けるようになりますが、ポイントの理解や問題演習で躓くことが多い方は、参考書を併用するとスムーズに理解できます。

経済学の場合も、過去問集が自力でこなせる方には不要ですが、そうではない場合は、以下の3つのシリーズから1つ選んで参考書を併用することをおすすめします。

1.「速習!経済学 石川秀樹」(速習!マクロ経済学、速習!ミクロ経済学、基礎力トレーニング(マクロ&ミクロ)の3分冊)は、3つのなかで最も踏み込んだ分野をカバーしており、網羅性が高いといえます。経済学に時間を割けるという方や、経済学を得点源にしたい方におすすめです。

2.「らくらく経済学入門 週刊住宅新聞社」(マクロ、ミクロ、計算問題編、記述・論文編の4分冊)は、3つのなかで最もスタンダードな参考書といえます。労基Aでも、この参考書程度の内容は抑えておいてほしい参考書といえます。

3.「最初でつまずかない経済学」(マクロ編/ミクロ編の2分冊)は、3つのなかで最も基礎的な内容に重きを置いています。経済学が苦手な方や、経済学は最低限の学習にとどめたい方に向いています。

これらの参考書は、同じ項目でも解き方の視点や道筋が異なっており、難しい参考書だから自分に合わないとか、易しい参考書だから自分に合うとは限りません。どれか1つの参考書をやってみて挫折したら、他の参考書を試してみることもおすすめできます。

これらの経済学の参考書も、必須教材では無いですし、あくまでインプット目的のテキスト本です。公務員試験の定石として、最終的には必ず過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5」や「公務員試験過去問新クイックマスター」など)に取り組むべきです。

解法の玉手箱(数的推理/判断推理)

数的推理や判断推理も、算数・数学に対するコンプレックスや、理屈で考える解法に不慣れという方も少なくありません。もちろん、過去問集だけでこなせるという方もたくさんおられます。

その一方で、数的推理や判断推理が一向に解けないという方には、実務教育出版の「玉手箱」シリーズ(数的推理がみるみるわかる! 解法の玉手箱判断推理がみるみるわかる! 解法の玉手箱の2分冊)を入門書としておすすめします。

「玉手箱」シリーズは、数的推理・判断推理に知識だけを取り出して、算数・数学の学び直しや論理的思考のノウハウを、初歩中の初歩から無理なく再学習できる入門書です。また、過去の本試験問題から解き方を分類し、一通りの解法をパターン学習できる良書といえます。

数的推理がみるみるわかる! 解法の玉手箱」「判断推理がみるみるわかる! 解法の玉手箱」は、非常に典型的な基本問題を通じて、あらゆる問題に適用できる解法を習得できる参考書です。過去問集を挫折した方には、土台固めの定番導入本としておすすめです。

もちろん、基本問題ばかりでは本試験には不足です。この参考書をこなす場合でも、過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5」や「公務員試験過去問新クイックマスター」など)に戻って、習得した解法を本試験レベルに見合った形で使いこなすための本格的な問題演習は絶対にやっておくべきです。

文章理解の英単語集

労基Aの文章理解も、基礎能力試験は国家専門職(国税、財務など)と共通問題であり、地上や国一など標準的な大卒程度公務員試験と同じレベルです。一般的に課題文の難易度は、高校の教科書~センター試験レベルだといえます。

このうち英文の場合、高校・大学の受験勉強や、TOEIC、英検など資格試験で学習経験のある方なら、いきなり過去問集から進めても難なく解けると思います。課題文自体は長いのですが、使われている語法や文法は難しいものではありません。

その一方、過去問集を解いたときに、英語力に不安を感じた方には、「速読速聴・英単語 Core 1900」をおすすめします。あるいは、大学受験で使った経験があるなら、「速読英単語(2)上級編」に替えても構いません。

どちらも割合長めで上質の英文を多数掲載し、単語力とともに速読力も含めた英語力を身につけることができる良書です。英単語集ではありますが、語彙・文法・速読を同時に鍛錬できますし、公務員試験に必要な英語力を固めるのに最適な参考書といえます。

公務員試験の英文は長めですが、文法や構文的に高度で難解な内容は含まれず、基本~標準的な語彙力と、特別では無い一般的な速読力さえ身につければ、そんなに難しい英文ではありません。

このため、過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5 文章理解・資料解釈」や「公務員試験過去問新クイックマスター 文章理解」など)だけでも難なく解き進めることができ、労基でも十分に対応できる方が多くおられます。その一方、英語学習の経験が少なく、過去問がうまく読み取れないという方は、「速読速聴・英単語 Core 1900」または「速読英単語(2)上級編」を追加して基礎固めを並行することをおすすめします。

もちろん、英単語集はあくまでも一般的な英語力の基礎を身につけるものであり、これだけで公務員試験には対応できません。英単語集の有無に関係なく、過去問集(「新スーパー過去問ゼミ5 文章理解・資料解釈」や「公務員試験過去問新クイックマスター 文章理解」など)にはしっかり取り組んで、本試験問題を解くことに慣れることが必須といえます。

時事対策の参考書

労基Aにおける時事対策は、絶対に必要な試験勉強といえます。「公務員試験 速攻の時事 実務教育出版」は公務員試験の時事対策の定番中の定番参考書であり、必ず取り組むことをおすすめします。

本書は、政治、経済、財政、国際、厚生、労働、文部科学、環境、司法警察、社会問題を幅広くカバーしており、毎年最新版に改訂される参考書です。特に、労基Aの受験生が後回しにしがちな分野の動向も、これ1冊でしっかり把握できます。

なお、「公務員試験 速攻の時事 実務教育出版」には「公務員試験 速攻の時事 実戦トレーニング編」という併用教材があります。収録された独自問題には難易度にムラがあり、傾向把握という参考材料として有益ですが、問題の出来不出来は気にする必要はありません。

むしろこのトレーニング編は、数百以上の重要時事用語を簡潔に解説している部分があります。こちらは絶対に必要な教材ではありませんが、毎年改訂版が出ており、時事用語集がほしいという方には、十分おすすめできる良書といえます。

このほか、「直前対策ブック 実務教育出版」は、労基など公務員試験受験生が後回しにしがちな、しかし本試験で出題されやすい時事データをサッと見返すのに最適です。白書、法改正&新法、重要判例、各種統計やデータなどをコンパクトにまとめており、こちらも毎年最新版が出ています。

労働法の参考書(択一、記述)

労基Aでは労働法は必須科目ですし、記述式も課されます。

労働法の基礎固め・択一対策

労働法の場合も、まずは基礎固めと択一対策を兼ねた「新スーパー過去問ゼミ5 労働法」をおすすめします。これが合わなかった場合は、「公務員試験過去問新クイックマスター 労働法」に替えても構いません。

どちらもポイント整理のインプット部分と本格的な過去問演習を項目別に進めることができる過去問集と言われる一体型教材です。知識ゼロの初学者の方が、効率よく基礎知識を習得しながら過去問演習をこなすことで、初歩から本試験まで一貫して使えるメイン教材です。

労働法の場合も過去問集は「新スーパー過去問ゼミ5 労働法」「公務員試験過去問新クイックマスター 労働法」どちらか1冊で構いません。どちらかといえば問題の精度や網羅性で優る「スー過去」がおすすめですが、合わなかった場合は分かりやすさを重視した「クイマス」に替えても構いません。

また、労働法は記述式があるため、入門書として「公務員Vテキスト 労働法 TAC」の併用をおすすめします。過去問集をこなしながら、並行して本書を読み進め、労働法の主要な論点を整理していくと良いでしょう。

Vテキストは、大手予備校TACが受講生向けに作った標準テキストです。市販もされており、労働法の重要な項目をスマートに理解していくのに最適な入門書といえます。過去問集で基礎固めと択一対策を行い、Vテキストで主要な論点を整理していきます。

労働法の記述対策参考書

労基Aの労働法の記述式試験は、3つ程度の用語を100文字程度で書かせる用語説明問題、判例などを題材にした事例問題、ある事例の中から労働基準法などに違反する事柄など問題点や指導内容を抽出させる問題、という小問が出題されます。

この問題では、司法試験のように学説対立に触れながら論証を展開するといった記述レベルは要求されません。労基Aの記述式問題はごく標準的な難易度ですし、学説を列挙するほどではなく、バランスの取れた通説的な記述で十分といえます。

このため独学なら、労基Aの記述式対策は、司法試験向けの入門レベルの概説書で対応出来るといえます。以下の3冊の参考書から1冊読めば十分だと思います。

1.「プレップ労働法 森戸英幸 弘文堂」は、司法試験向けの入門書として高い人気を誇る参考書です。笑いも交えた楽しく読める文体で、重要論点は漏れ無くまとめています。

2.「労働法 下井隆史 有斐閣」は、上記プレップとは対照的で、実に手堅く正統派のテキストと言えます。堅実で真面目な参考書が良いという方は、こちらのほうが良いと思います。

3.「ベーシック労働法 有斐閣アルマ」は、3冊のなかで最もボリュームがあり、改訂の頻度もやや多めです。大学の授業やゼミで指定教材となっている方も多いと思います。

これら3冊は、労働法の入門書や概説書と言われるレベルであり、労基Aの出題傾向や難易度を考えれば、どれも最適な参考書といえます。見た目や値段で選んでも構いませんし、理解の軸となる参考書を1冊定め、しっかりと論点整理を行うことが重要です。

このほか、代表的な労働判例の確認を行うには、「労働判例百選」をおすすめします。最重要判例に加え、近時の重要判例も加えた定番の判例集です。

また、参考書で出てきた判例で百選には無いケースを調べたい場合など、判例付き六法(「有斐閣判例六法」など)があると、とても便利だと思います。

労基Aの労働法の記述問題は、自説と反対説を列挙するといった高度な記述は不要です。判例や通説を理解して偏りの無い標準的な記述ができれば十分ですし、どの参考書・教材を使う場合も、学説など専門的で高度な部分は、飛ばして読んでも構いません。

労働事情、労働経済・社会保障の参考書

労働事情は必須科目で記述式も課される重要科目ですが、労働経済・社会保障と一体的に取り組むことで、高い学習効果が得られます。

基礎固め・択一対策

労働経済と社会保障は、両者合わせて「社会政策」として取り組みます。社会政策という科目の労働分野が労働経済、社会保障(福祉)分野が社会保障であり、こうした知識を前提にした科目が労働事情といえます。

社会政策の入門書としては、やはり「公務員Vテキスト 社会政策」をおすすめします。Vテキストは知識が全く無い初学者でも基本から学習し、本試験に必要な重要事項まで一通り習得することができる優れたテキストです。

労働事情の入門書には、「労働経済学入門 太田、橘木 有斐閣」をおすすめします。本書は労働事情に相当する最近の諸問題を取り上げつつ、労働経済(=社会政策の労働分野)のうちVテキストでは足りない重要項目を補充することができる参考書です。

社会政策(労働経済・社会保障)と労働事情は、「公務員Vテキスト 社会政策」で基本的な用語や論点を整理し、「労働経済学入門 太田、橘木 有斐閣」で比較的最近の論点など足りない部分を補うことで、基礎固め・択一対策は十分ですし、記述対策の土台となる基礎論点・背景知識もしっかり習得できます。

なお、労働事情や社会政策には、市販の過去問集がありません。労基の試験問題は人事院に請求できますが、人事院提供の試験問題は問題と解答だけですし、請求から入手まで数ヶ月かかる場合がある点は留意すべきです。

その一方、市販の過去問演習書である「国家専門職[大卒]教養・専門試験 過去問500」が参考になりますし、直近の過去問を年度別に復元した「本試験過去問題集 公務員試験 TAC 労働基準監督官A」も役に立ちます。これらは労基の問題集としてはとても少ないのですが、人事院の過去問が間に合わないという場合に備えて入手しておくと良いでしょう。

労働事情の記述式対策

労基Aの労働事情の記述式試験は、労働経済に関する3つ程度の用語を100文字程度で書かせる用語説明問題や、特定のテーマに関して現状や施策などを述べさせる論述問題、という小問が出されます。

労働事情の記述式も、ごくごく標準的な難易度です。「就業率」「実質賃金」「労働生産性」など、社会政策の労働分野としての労働経済・労働事情や、経済学の一分野である労働経済学からの出題が含まれています。

論述問題については、ある特定のテーマについて、説明を求められる設問ごとに、提示された3~4つのキーワードを使いなさい、という形式が続いています。どのキーワードも、以下の2冊の入門書にしっかり取り組めば、標準的な典型用語はクリアできるはずです。

やはり記述式対策でも、先述通り「公務員Vテキスト 社会政策」の労働経済・労働事情の章で基本項目を読み込み、経済学とも重なる内容や最新の論点は「労働経済学入門 太田、橘木 有斐閣」でしっかりと補強を行います。この2冊の入門書を徹底理解することで、記述式においても労働経済・労働事情の基礎固めにつながります。

その一方、論述問題は、ほぼ毎年「労働経済白書」(かつての労働白書)からの出典が見られます。入門書だけでは対応できない、最新動向や議論を踏まえた出題可能性が高い論点の理解に、ぜひとも取り組むべき本だといえます。

労働経済白書は高価な本ですが、毎年9月に出ており、例年200~300ページで、択一式問題でも頻繁に引用が見られます。試験勉強の早いうちから入手して、何度も通読しておくと、択一・記述ともに、労働分野の知識と思考能力が体系的に高まると思います。

このように労働事情の記述式対策は、「公務員Vテキスト 社会政策」と「労働経済学入門 太田、橘木 有斐閣」を重要キーワードを軸に徹底して読み込み、知識や論点を整理すれば、定型的な典型問題に対処できます。その上で、「労働経済白書」を熟読し、時事対策に取り組むことで、出題可能性が高い最新動向を把握することができます。

面接試験の参考書

労基の面接試験は個別面接です。公務員試験特有の傾向や対策を知っておくためにも、以下の2冊の参考書、できれば両方読み込んでおくことをおすすめします。

1.「公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」は、面接試験、官庁訪問、集団討論を対象に、主に国家公務員試験(国家総合職、国家一般職)を想定した本ですが、労基の方にもおおいに役立つ参考書としておすすめします。

本書は、面接官がどこを見ているのか、どこをどのように評価しているのか、その評価基準の背景には何があるのかといった、採用側の本音からアプローチしています。そのことで、「より評価してもらうにはどうしたら良いか?」について詳しく解説しています。

また、コンピテンシー面接など公務員特有の面接試験を理解するのにも役立ちますし、面接試験の準備・心構え、入室から退室までの流れといった基本事項も説明しています。「公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」は労基はもちろん、大卒公務員試験ならどなたにもおすすめできる定番の人気参考書といえます。

2.「面接・官庁訪問の秘伝」も、個別面接はもちろん、集団面接、集団討論や官庁訪問にも対応した面接参考書です。こちらは、労基など国家専門職や、国一、地上、市役所、町村役場、裁判所一般職、国家専門職、国家特別職など、国家総合職を除く大半の大卒程度公務員試験に対応します。

本書は毎年最新版が出ており、TACの人気講師・山下純一氏が手がけた非常にわかりやすく読みやすい参考書です。二色刷りで豊富な図解やイラストを交え、面接試験のマナー・準備、実際の面接試験の流れから本格的な面接対策まで一貫して理解できます。

この参考書は自己分析によって自分の核心部分(コアな部分)を作り、どんな質問が来てもブレることが無い整合性の取れた応答を目指すアプローチとなっています。面接カードの書き方や面接に臨む心構えなど、あらゆる場面への対応力が身につく良書といえます。

さらに、複数のダメな回答と無難な回答が提示され、著者の指摘がポイントとしてまとまった想定問答集も25問掲載されています。「面接・官庁訪問の秘伝」は面接試験の基礎を理解し、自分のコアな部分を作って自己練習を行うことができる強力な対策本としておすすめです。

ここまで、採用する側の視点にたった「公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」と、自分と向き合ってコアな部分を作る「面接・官庁訪問の秘伝」を2冊合わせて読み込むことで、面接試験を両面から理解し、独学でも十分強力な面接対策を実現できると思います。