特別区の論文予想

ここでは、「特別区の論文予想」と題して、東京都特別区1類の論文試験の出題予想を取り上げます。

特別区の論文予想:形式面

まず、形式面から特別区の論文試験を予想します。ここ数年、特別区の論文試験は、2題中1題選択解答、1時間20分とされています。文字数の指定は、平成28年度に「1000字以上1500字程度」と明記されました。

また、特別区は2題とも、地方公務員の論文試験にしては問題文がやや長めで、この傾向は当面変わらないものと予想されます。ここで、特別区の論文試験の直近数年間の試験問題から、代表的な出題例を紹介します。

スマートフォンをはじめとした情報通信機器の普及やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用の拡大等、情報通信技術(ICT)は生活の中に浸透しています。こうした中、特別区では、ICTの利活用による区民サービスの向上、地域社会との連携強化に向けた取り組みが進められています。
このような状況を踏まえ、区民の視点に立ったICTのさらなる利活用の促進に向けて、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい(平成28年度・第2問)。

区民の健康志向や環境への配慮などにより、自転車の利用者が増えていますが、それに伴い、歩行者や自動車との接触事故や放置自転車の増加など、多くの問題が起きています。
このような現状を踏まえ、特別区の職員として、地域社会において自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくりについてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい(平成26年度・第1問)。

特別区の論文試験は、毎年2題中1題選択解答です。上記のように、どの年度も2題とも問題文が2つの段落に分かれ、前段で現状についての説明があり、後段でそれを踏まえた課題そのものが提示されます。

この出題形式も、ここ数年間変わっていません。前段の現状説明を踏まえ、後段では必ず、「~について(または「~に向けて」)」「特別区の職員として」「どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」という形式で課題が課されます。

「~について(または「~に向けて」)」は、「特別区の職員として」と「どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」の間に入る場合もありますが、多くの場合は先に記述されています。

特別区の論文試験の形式はここ数年変わっていません。ただし特別区は、何年か同じ形式が続く一方で、変更される年度もあり、また変更後の形式が何年か続く、ということを繰り返しています。

このため、特別区の論文試験は、前年度の形式を踏まえることを基本としつつ、形式の変更も予想して、制限時間、文字数、選択解答/必須解答、出題形式(問題文)が変わることにも対処できるために、ある程度一般的な公務員試験の論文対策にも取り組むことをおすすめします。

特別区の論文予想テーマ

ここからは、特別区の論文試験のテーマを予想します。まず、ここ数年間の直近のテーマは以下のとおりです。

  1. ユニバーサルデザインの視点に立った人にやさしいまちづくりについて
  2. 区民の視点に立ったICTのさらなる利活用の促進に向けて
  1. 自治体事務のアウトソーシングについて
  2. ワークライフバランスの実現に向け(て)
  1. 地域社会において自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくりについて
  2. グローバル化の流れを積極的に施策に反映していくために

特別区の論文で最も予想されるテーマは「まちづくり」に関する課題です。

具体的には、少子高齢化に関わる「子育て支援」あるいは「介護の支援」、最近の地震やゲリラ豪雨など異例な気象状況に絡めた「災害に強いまちづくり」、地球温暖化やごみ問題に関する「環境にやさしいまちづくり」などが予想できます。

また、直近の経済問題・雇用問題に関係した論文試験も十分に考えられます。

このテーマでは、政府の経済政策に関係して特別区が取り組むべき「景気対策」、増税・生活保護の増加などに絡めた「格差問題」、基礎自治体の特別区らしく最も身近な「若者の就業支援(ニート、フリーター対策なども)」「中小企業の支援策」なども予想できます。

さらに、特別区は他の自治体と異なり、自治体の業務そのものに関するテーマが頻出なのも特徴的です。

上記の過去問でいえば、「区民の視点に立ったICTのさらなる利活用の促進」や「自治体事務のアウトソーシング」は、特別区の業務そのものに関する課題です。これは特別区の論文試験特有の頻出テーマとして、予想から外すべきでは無いと思います。

特別区は基礎自治体であるとともに、都市化・国際化が進んだ自治体でもあります。これは論文試験を予想する場合も、とても身近な課題から比較的大きなテーマまで、ある程度幅を広げて考慮する必要があります。

これは上記の過去問でいえば、住民福祉の向上に関わる身近な課題として「人にやさしいまちづくり」「ワークライフバランス」「自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくり」などの出題例がある一方、「グローバル化の流れ」は外国人旅行者の増加やオリンピック・パラリンピックの開催を踏まえており、比較的大きなテーマも出ています。

ただし、どの課題の場合も、一般論や自治体としての取り組みではなく、「特別区の職員として」「どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」と問われています。

つまり、まるでひとごとのように書くのではなく、「あなた自身が特別区の職員ならどう取り組むのですか?」と問われていることに留意して、特別区の行政事務を預かる職員として、当事者として書くことが要求されている点が重要です。

これは裏を返せば、特別区の職員としての適性をストレートに試すテーマが最も予想できますし、「特別区の職員ならどうするか?」と問われそうに無い課題は出にくいともいえます。

ここまでに取り上げた予想テーマ以外で言えば、特別区の職員としてコンプライアンス、教育問題(いじめ、教員の質など)、危機管理のあり方、情報社会・情報公開・情報化、ボランティア、男女共同参画社会、地域コミュニティなどは十分に出題が予想できます。

また、先述通り、行政の役割や特別区の業務そのものに関するテーマも頻出です。今回取り上げてきたどの予想テーマの場合も、評論家の視点や一般行政という曖昧な立場で書くのでは無く、「特別区の職員としてどうなのか」という責任ある記述が求められていることに留意すべきでしょう。