理系公務員の参考書

今回は、理系公務員の参考書を取り上げます。ここでは、国家総合職、国家一般職大卒、地方上級(都道府県、政令指定都市、東京都特別区)、市役所の理系(技術系)職種・区分、および、労基B(理工系)を対象にします。

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必ずこなすべき教材:教養試験(基礎能力試験)

公務員試験は、教養試験(基礎能力試験)と専門試験の合計十数科目を短期間でクリアする必要があります。このため、「過去問集」と言って、必要な知識・解法のインプットと、アウトプットに相当する過去問演習を効率よく出来るメイン用途の教材が各社から出ており、まずはこれから真っ先に取り組むことが定石といえます。

教養試験(基礎能力試験)は理系公務員、行政系・事務系、福祉系・心理系など、同じ採用試験なら職種や区分を問わず共通の問題が課されることが一般的です。このため過去問集に関しても、公務員受験生に幅広く使われている定番の教材があります。

大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。

必ずこなすべき教材:専門試験

理系公務員の専門試験も、大学・大学院における学問的な探究とは異なり、公務員試験という採用試験です。このため、安定した人材の継続的な確保のために、毎年の傾向や難易度が大きく変わることはなく、各科目の知識としての一定の理解度が試されます。

こうしたことから、専門試験の参考書も、要点をサッとインプットしつつ、しっかりと過去問の演習を行うことで、公務員試験の頻出項目や、公務員試験特有のクセに慣れつつ、本試験問題が解ける力を身につけることが必要です。

技術系スー過去

理系公務員のうち、択一式のメイン教材には、「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ」シリーズをおすすめします。国家一般職大卒、地方上級(都道府県、政令指定都市、東京都特別区)、国家総合職の技術系区分に対応し、もちろん市役所大卒でも使えます。

本書は、工学に関する基礎(数学・物理)、土木、機械、電気・電子・情報、農学・農業、化学の6冊が出ています。「スー過去」で知られる定番教材の理系公務員版であり、要点ポイントと過去問演習が一体となって効率よく専門試験を攻略できる良書です。

この「技術系スー過去」は、本書だけでも十分に択一対策が可能ですが、演習量を上積みする場合、あるいは、国総や記述式試験がある方は、本書に加えて後述する「よくでるシリーズ(頻出問題)」の追加をおすすめします。

公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ」は、知識・解法のポイント部分と、豊富な過去問演習が一体となった「過去問集」と呼ばれるオールラウンド型教材です。試験勉強の初めから本試験まで、真っ先に取り組むべきメイン教材といえます。

よくでるシリーズ(「頻出問題」)

上・中級公務員試験 技術系よくでるシリーズ」は、「~の頻出問題」と題された、技術系公務員および心理学の問題集シリーズです。工学に関する基礎(数学・物理)、土木、化学、電気・電子、農学・農業、心理学の6冊が出ています(心理学は絶版重版未定です)。

本書も国総、国一、地上の試験ガイドと分野別の頻出問題で構成された過去問ベースの問題集であり、市役所大卒にも対応できます。解説が無く模範解答もムラがあるのですが、市販の教材で記述式の過去問が入手できる教材は極めて稀です。

「よくでるシリーズ」は、先に挙げた「技術系スー過去」シリーズの前身教材です。化学と電気・電子は1998~1999年、他の科目も2003~2004年に改訂が止まっており、内容的に古いことが難点です。

にも関わらず、受験生には根強い人気が続き、実務教育出版も取り扱いを続けています。公務員試験は出題傾向や難易度がそう大きく変わらない試験ですし、平成24年度の国家公務員試験の制度改革以前の国一(旧・国家2種)や地上の過去問を数多くこなせることは大きなメリットです。

また、本書の「試験ガイド」は、勉強法や学習のポイントが記載され、それぞれの系統に属する諸科目について参考書籍を豊富に紹介しています。学習方針を決める際の貴重な1冊としてもおおいにおすすめできます。

先に挙げた「技術系スー過去」はメイン教材として最適ですし、択一対策には欠かせません。その一方、よくでるシリーズ(「頻出問題」)は、国総(旧・国家1種)の過去問も多く、理系公務員の勉強法、頻出分野の内容把握、参考書籍、記述式の過去問を知る参考書として追加することがおすすめできる良書といえます。

ここまで、志望先が択一式試験だけであれば「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ」だけでも良いと思いますが、問題演習を確実に増やしたい方や、国総志望あるいは記述式試験が課される方は「上・中級公務員試験 技術系よくでるシリーズ」を追加するのが望ましいと思います。

米田本

土木職の方には、大学教育出版の「米田昌弘 土木職公務員試験専門問題と解答」シリーズ(米田本)もおすすめできます。こちらは近畿大学教授・米田昌弘による、土木職の試験勉強が一通り出来る教材です。

本書は、「必修科目編」、「選択科目編」、工学の基礎に該当する「数学編」「物理編」、高度な問題を取り扱った「実践問題集 必修・選択科目編」「実践問題集 数学・物理編」、国家総合職の過去問も加味された「総仕上げ編」の計7冊で構成されています。

科目別の4冊はポイント整理と演習で構成され、各科目をしっかりと固めることができます。実践問題集や総仕上げ編は多くの過去問を通じた演習書で、高いレベルの実力アップが可能です。

「米田本」は国家一般職大卒の過去問をベースにした教材ですが、土木職の公務員なら、あらゆる試験に使える内容をカバーしています。地方上級や市役所大卒の方なら十分対応できますし、問題無くおすすめできる、人気の高い定番教材です。

なお、国総の方には、全7冊こなしても、物足りないかと思います。目安としては、国家総合職では本シリーズ7冊に加え、大学での専門書や他の公務員教材が必要だと思います。

その一方、国家一般職大卒・地方上級(都道府県、政令指定都市)および地上と同日実施の市役所なら実践問題集までの6冊、その他の市役所や町村役場なら実践問題集や総仕上げ編を除いた4冊で、本試験まで対応できると思います。

(もちろん、理想を言えば、どの志望者の方も、全7冊をやるのが理想的です。時間的に余裕の無い場合や、応用的な問題に時間がかかりすぎる場合は、上記のように、基礎~標準に絞った方法もありだという意味です)

「米田本」は、先ほどの「技術系スー過去」&よくでるシリーズ(「頻出問題」)に比べ、記述の精度が高く、新しい出題傾向を踏まえています。ただし、7分冊ということで、かさばることもありますし、公務員試験まで短い期間のなかで効率的とは言い難いともいえます。

このためメイン教材として、公務員試験まで時間が無い方は「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ」&「上・中級公務員試験 技術系よくでるシリーズ」の組み合わせが現実的と思います。その一方、公務員試験に時間が取れてしっかりと学習できる方は、「米田昌弘 土木職公務員試験専門問題と解答」シリーズに代えることもおすすめできます。

工学の基礎(数学、物理)、土木職でその他におすすめできる教材

工学の基礎(数学、物理)や土木職向けには、以下に挙げる教材をおすすめすることができます。上記に挙げた教材が合わなかったり、試験勉強の総仕上げ的な演習書を取り上げ、本試験まで時間が無い場合の次善の策にも触れます。

なお、ここで取り上げる工学の基礎は、数学と物理を想定しています。労基Bの方は化学の対策が別途必要ですが、公務員試験向けに特化した市販の教材が無いことに留意してください(この試験対策は後述します)。

その前に、工学の基礎(数学・物理)に関しても、先に取り上げた「スー過去」が出ています。「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ 工学に関する基礎(数学・物理)」が該当するのですが、他の専門科目同様に、メイン用途の第一候補としておすすめできます。

技術系公務員試験 工学の基礎[数学・物理]攻略問題集 新版

その一方、「技術系公務員試験 工学の基礎[数学・物理]攻略問題集 新版 丸山大介 実務教育出版」は、工学の基礎(数学、物理)の過去問を豊富に掲載し、基礎知識の整理部分と一体となった過去問集に近い問題集です。「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ」が合わなかった場合の代替教材としておすすめです。

本書では、国一・地上・市役所や労基Bにおける工学の基礎(数学、物理)を一通りクリアすることが出来ると思います。この問題集の水準は、国総では基礎~標準にとどまりますが、国一、労基、地上、市役所大卒の数学、物理のメイン教材としては十分おすすめできます。

(国総の方は、本書を使う場合も、「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ 工学に関する基礎(数学・物理)」など他の問題集で、演習量の上積みが必要だと思います)

技術系公務員試験 工学の基礎[数学・物理]攻略問題集 新版 丸山大介 実務教育出版」も、非常に豊富な過去問を、項目別に基礎知識の整理部分と一体的に収録したメイン用途の良書です。内容的にはこちらのほうが新しく、「公務員試験 技術系新スーパー過去問ゼミ」が合わなかった方に十分にはおすすめできる問題集といえます。

公務員試験 技術系〈最新〉過去問

公務員試験 技術系〈最新〉過去問 実務教育出版」シリーズは、工学に関する基礎(数学・物理)、土木の2冊が出ている過去問演習書です。とにかく問題演習に特化した問題集であり、登場以来ほぼ毎年最新版が出ています。

本書は国総、国一、地上の過去問を掲載し、土木ではこれらに加え、東京都1類、特別区1類の過去問も掲載しています。今まで紹介してきた問題集と異なり、年度別・試験別に問題が掲載された問題集です。

この問題集は、頻繁に最新版が出ていて年度別に問題が収録されているため、今まで紹介してきたメイン教材で試験勉強をしてきた方が、試験勉強の総仕上げに直近の過去問を使って一気に問題演習をこなす用途におすすめできます。

その一方、理系公務員の受験生は学部・大学院で基礎知識が備わっており、いきなり本書から取り組んでも構わないと思います。特に、今まで取り上げてきた項目別のメイン教材を挫折した方や、時間的な余裕が無い方は、とりあえず本書で徹底演習して本試験に備えるという選択肢もありかと思います。

公務員試験 技術系〈最新〉過去問 実務教育出版」シリーズは直近の過去問を一通り掲載した問題集であり、網羅性は無いものの一応の頻出問題に一通り触れることは出来ます。本来は直前期の総仕上げ的な問題集ですが、メイン教材をやるほどの時間が無い方が次善の策として教材を絞り込む場合に、本書という選択肢もあるかと思います。

理系公務員・試験別の目安

国家総合職の方は上記の教材に加え、大学で使用した学部レベルの専門書や大学院入試レベルも見据えた教材の追加をおすすめします。

地方公務員(地方上級=都道府県・政令指定都市・東京都特別区、市役所、町村役場)、国家一般職大卒、国立大学法人等職員、都道府県警察(東京都は警視庁)や消防本部の理系(技術系)区分の方は、今回取り上げてきた教材をメインにして試験勉強を行えば十分です。

ただし、労働基準監督官B(理工系)は工学の基礎に数学・物理だけでなく化学も含まれるため、後述通り人事院に過去問を請求して問題を解いたり、高校~大学レベルの化学を学習し直しましょう。また、労基Bは択一式で労働事情が課されます。

理系公務員の過去問請求方法(人事院)

人事院が実施する国家公務員(国家総合職、国家一般職大卒、労基B、食品衛生監視員)の方は、人事院に過去問を5~10年分、余裕が無い方でも3~5年分は請求することをおすすめします。

過去問の具体的な請求方法は、人事院の公式サイトで明記しています。請求から入手まで1ヶ月以上かかることもあり、早めの請求をおすすめします。

一方、地方公務員ではこのような過去問の公開制度がありません。公式サイト上で例題を数問掲載しているケースが一般的です。過去問をサイト上で公開している自治体(大阪府、大阪市、東京都特別区)の過去問に取り組んだり、国家一般職大卒の過去問を請求しておくと良いでしょう。

地方上級の方にとって、国一は同等か少し易しめの問題です。また、市役所の方には、地上・国一はやや難しい問題が見られます。とはいえ、公務員試験の標準的なレベルである国一の過去問に目を通すだけでも、公務員試験の頻出分野や必要な知識を知り、試験勉強に活かす参考材料として役立つと思います。

人事院の過去問は、国家総合職の方は絶対必要だと思います。労基Bの方も工学の基礎に化学があるため、請求をおすすめします。その他の公務員試験の方は、試験勉強自体は今回の記事で取り上げてきた教材で十分と思いますが、頻出分野を確認したい方は請求したほうが良いと思います。

理系公務員の専門記述対策

国家総合職の専門記述試験では、過去問に取り組むことが絶対に欠かせません。国総の方は、過去問を目安にしつつ、大学院入試の過去問や、定評のある院試対策の問題集にも取り組みましょう。

また、一部の自治体(東京都など)や国家一般職大卒にも専門記述試験があります。国総よりは比較的易しめの説明問題が中心ですが、やはり過去問を中心に、学部~院試レベルの教材で必要な知識の整理を行いましょう。

時事対策の参考書

時事対策は理系公務員においても、絶対に必要な試験勉強といえます。「公務員試験 速攻の時事 実務教育出版」には、公務員試験全般における定番中の定番参考書として、必ず取り組むことをおすすめします。

本書は特に、公務員試験で頻出ながら受験生が後回しにしがちな経済や財政に関するデータを整理できます。扱ってる内容は政治、経済、財政、国際、厚生、労働、文部科学、環境、司法警察、社会問題と幅広くカバーしており、毎年最新版に改訂される参考書です。

論文試験・作文試験(教養論文)の参考書

※論文試験・作文試験(教養論文)の参考書に関しては、地方上級・国家一般職大卒・市役所大卒、国家総合職の政策論文試験、国家専門職/特別職、理系公務員、福祉系・心理系公務員など、大卒程度の公務員試験に幅広く対応できる参考書を、論文(作文)試験/政策論文対策(大卒程度)で一括してまとめていますので、そちらの記事を参照なさってください。

面接試験の参考書

理系公務員においても面接試験の参考書としては、以下の2冊をおすすめします。ただし、詳しくは後述通り、できれば両方読むことをおすすめします。

1.「公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」は、国家総合職や国家一般職の面接試験、官庁訪問、集団討論を想定した面接本ですが、地上・市役所大卒の方にも大いにおすすめできる人気の定番参考書といえます。

本書は、面接試験の準備・心構え、面接カード・個別面接・集団面接・集団討論・官庁訪問の進め方や極意について、基礎知識から実践的な内容までカバーしているため、国家公務員だけでなく、地方上級や市役所といった地方公務員の方にも有益な参考書です。

特に「公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」は、面接官の本音から採用する側が何を見ているのかというアプローチや、公務員特有のコンピテンシー面接も取り上げており、あらゆる公務員試験の受験生に読んでほしい良書といえます。

2.「面接・官庁訪問の秘伝」は、TACの人気講師・山下純一氏が手がけ、個別面接から、集団面接、集団討論や官庁訪問にも対応する参考書です。

こちらのほうは、二色刷りで豊富な図解やイラストを交え、非常に読みやすくわかりやすい定番参考書です。国一、地上、市役所、町村役場、国税、裁判所一般職、国家専門職(労基など)、国家特別職など、国家総合職を除く大卒程度公務員試験を幅広く対象にしています。

さらに、複数のダメな回答と無難な回答が提示され、著者の指摘がポイントとしてまとめられた想定問答集が25問掲載されています。もちろん、面接試験の基礎知識(準備、マナー、心構えなど)も抜かり無く解説しています。

特に「面接・官庁訪問の秘伝」は、自己分析によって「自分だけのコアな部分」を作り、面接カードやエントリシートの記述から実際の面接の応答に至るまで、どんな質問や場面でも対応できる一貫した軸を作るアプローチを丁寧に解説しています。

このように、自己分析からコアな部分づくりという「面接・官庁訪問の秘伝」と、どうすれば面接官に評価されるかという「公務員試験 現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本」は、対照的なアプローチの良書であり、2冊合わせて読み込んでおくと、面接試験を多面的に備えることができると思います。

受験ジャーナル

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受験ジャーナル」(実務教育出版)は、大卒程度の公務員試験向けの受験情報誌です。1年間に1~2ヶ月に1回のペースで6冊出版されます。また、それとは別に、別冊として「受験ジャーナル特別企画」が、年間5冊出版されます。

(注:これらとは別に1冊だけ、「高卒程度公務員 直前必勝ゼミ 実務教育出版」は、高卒程度の公務員試験向けです)

受験ジャーナル」本誌は、国家公務員・地方公務員問わず、大卒程度の公務員試験に幅広く対応する受験情報誌です。試験内容や実際の科目別出題数、予想問題や過去問、面接試験や論・作文試験に関する出題例や対策なども掲載しています。

さらに、「受験ジャーナル」本誌は、現役職員の仕事内容やインタビュー、実際に受かった方々の合格体験記も掲載され、モチベーションを維持するのに役立つ内容となっています。

また、「受験ジャーナル特別企画」は、例年、以下のテーマごとに5冊出版されます。こちらは特定のテーマごとに出版され、本誌よりも更にタイムリーな受験対策本として、十分おすすめの良書です。

これらも全て、直近の出題例に即応した内容となっており、毎年最新版が出ています。言うまでもないことですが、「受験ジャーナル」「受験ジャーナル特別企画」とも、各自の受験年度に応じた、最新年度版の購入をおすすめします。